第九話 オタクちゃんと喧嘩くんのデート


今日は松沢君と久しぶりのデートや、と言っても1日デートちゅうわけではなく学校に行くまでの間せやけど…。

そない訳で今は公園で松沢くんを待っとる所や。

ぎょうさんも、お互い家が近いんせやからどっちかの家で待ち合わせすればえぇーとか思うんやが。

まぁデートの待ち合わせ場所と言うたら最寄の駅とか公園がセオリーなんや。

まあ、全寮制の学園物の場合主人公の部屋とか食堂とか校門前なんだよなぁ。

何の話かって?秘密や。

と、変なこと考えとると松沢くんがやってきたんや。

こうゆう時って松沢君がはよう来て待っとるべきだと思うんだよなぁ。

マイナス5点やな。


「よう咲耶、待ったか?」

「今来た所や」


うん、やっぱりこの会話は男女逆であるべきだよなぁ。

因みにウチはホンマは1時間前から待ってたけど。

さらにマイナス5点や。


「じゃあ、何処行く?」


お、松沢君が何処行きたいか聞いてきたよ。

これやはプラス1点やね・・・・・ウチは採点厳しいんだよ?


「何処でもいいよ、松沢君が行きたい場所でいいよ」

「マジか、それならスポーツジムに行ってちょっくら筋トレだな。」

「え、な、なんやそれ?ちょ、た、確かに何処でもえぇって言ったけど、別の場所にしようよ!」

「くそぉ、打倒董子の新技を作ろうと思ってたところなのになぁ」


何処でもえぇとは言ったけど普通チトええかっこをはって女の子が喜びそうな場所選ぶよね?

それにデート中に他の女の子の名前出すのもどうなんや?

マイナス10点


「それなら咲耶、お前の行きたいところに行こうぜ。何処でも良いとは言ってたが、お前も行きたいところぐらいあるだろ?」


ホンマかいな、それならウチの行きたいところ松沢君にとことん付き合って貰いまっせ。

ちなみにウチの行きたいところに行ってくれるってのにはプラス3点や!


「ウチが行きたいのはゲーム屋や!唯のゲーム屋やないで!漫画もゲームもいろんなのが売ってる店や!ほな行くで!」


「え!?ちょ、それって何処だよ!おい!腕を引っ張るな!」


この後思わず松沢君の前でリボルティックのフィギュアを買ってしまった。

その後さらにウチは

「あ、あの漫画の新刊が出とるやないかぁ!」とか

「あのアーティストのDVD買わないとアカン!」とか

「1/8スケールフィギュアとかあったか!買わないと」とか

「ついでやからあの面白かったアニメの原作本を買うていくか」とか

「しもーた!ゲームの予約せんと!…何っ?この店限定特別版があるのか!?

く…通常版と予約特典がちゃうではおまへんか…しょうがない二つとも予約して…」とか

「新しいアーケードゲームが稼動開始しとるではおまへんか!せっかくやからプレイして行くか…

何、一回200円だと!?…まあえぇーや、やっていこう」とか

「こいつのこのキャラの動き、まるでなってへん!ウチが入って使い方を教えてやるか!」とか…

なんかずっとウチのターンやった。

松沢君が一言も文句を言わんとついて来てくれはったのには感激したよ。

プラス10点や!…これでもかなり良く採点したで?

ブッパも一通り終え疲れたのに加えちょっきしお昼ご飯の時間やったのでファミレスに入ったんや。


「ふぅ〜つい買い物しすぎたみたいや」

「しすぎたってレベルじゃねーだろコレ…」


普段ウチが金欠な理由がバレてしまったわ。


「と、咲耶はなんかすげぇいっぱいお金を使っちまったみたいだから俺が奢ってやるよ」

「え、ホンマ…?悪いわ…」

「いいよ気にするな」

「な、なら…じゃあ、お言葉に甘えようかな」

「おう、そうしろ」


なんだかんだでウチのわがままをちゃんと聞いてくれたから松沢君はやっぱ優しいんやな。

因みにウチが注文したのはこの店でいっちゃん高いので松沢くんが涙目になりよったけど気にせんでおこう。

悪いとは思うたが奢ると言った松沢君に乗っかっただけや。これが関西人クオリティや!

ファミレスでご飯を食べた後は返しとばかりに松沢君の買い物にウチがつきあってやったで。

ちゃんと付き合うウチも偉いやろ?お互いさまって奴や。

松沢君はスポーツ関係の店に入ったりでやっぱ動ける人なんやなぁと感心したで。

ウチとはまるで正反対かもしれんな。

それにウチの買ったものも松沢君が持ってくれたわ、おおきにな。

ぼちぼち学校の時間だしいったん荷物置きに帰ろうかと思ったんやけど。

どうも可笑しい雰囲気が後ろから漂っとるよ。


「はぁ〜…今日1日は仕事の事考えたくなかったんやけどなー…」

「ん?どうした咲耶?」

「松沢君、今日は楽しかったよ」

「おぉそうか、それならよかった」

「でね、チトウチ用事思い出しちゃって、先帰っててな」

「は?」

「堪忍な、チト急の用だか急がないと」

「お、おい咲耶ー!」

「それと、今日は学校行けないかもしれへんから!」


ウチは走ってその場を離れた。


「な、何なんだ…ってアイツの買ったのも俺が持って帰らないといけないのか!?

しかし、これはこれですげぇ筋トレになる気がするぜ!頑張って持って帰るぜー!咲耶―!」

何故か感謝されてしもうたがそれはそれ、とりあえず松沢君から離れなきゃアカンね。



…いつから見られてたんやろ。

気配を感じたのはファミレスを出てからやったと思うけど…

とりあえずこの先の通りは人通りが少なかったやろうから、そこまで行かんとな。

ウチは後ろからの気配を感じつつ、目的地の通りまで走って行く。


予想通り目的地であるこの通りは人が誰もおまへんな。

ちょうど日も傾いて来とるから、ビルの影が大きく伸びて良い感じに暗くなっとるわ。

ここなら好きに動けるさかい。

とりあえず、さっきからウチをつけてきた奴と顔を合わせにゃいかんな。

「さて…人のデートを覗き見るなんて趣味が悪いんじゃない?」

「ははっ、それってキミが言えたセリフかな?いつも誰かの監視してる君がね」

「なんやと?」


ウチは仕事の関係上、普段から隠して持ち歩いてるオートマチックの拳銃を構えさせてもらったで。

今の相手の一言からしても、ウチのしてる事がバれてるって事やからなぁ。

万が一に備えてこちらから行動させてもらったで。

そやけど周りが暗くて相手がどんな輩なのかわからんわ。


「あららぁ怖いなぁ、女の子がそんな拳銃持って…銃刀法違反ってやつだよ君」

「それくらい知っとるわ。でもウチのクラスにはまいど日本刀持ち歩いとる人がおるからそれと比べりゃ可愛いものよ」

「へぇーそうなんだ、ちょっとその学校には僕は通いたくないなー…」

「そやな、良い判断や」

「どうもありがとうね」

「で、ウチに何の用や?変な気配バリバリ出てたけどな」

「やっぱりちゃんと気がついてたんだね。これはもしかするとビンゴなんじゃないかな?」

「はよう答えなさい、さもないとあんさんの体に銃弾が貫通することになるわよ」


相手の顔は良くわからんけど、距離にしてみれば十分命中させれる距離や。


「わかった、わかった…それじゃちょっとしたゲームでもしてみようか」

「ゲームなら今日買ったから間に合っとるわ」

「まあまあ、とりあえずやってみようよ。」

「言っとくけどウチゲームでは負けんよ?」

「それじゃルール説明するよ。簡単に言えばどっちかが倒れるまで戦うだけだよ」

「倒れたらどうなるん?」

「勝った方の言う事を聞かなきゃならないんだと思うよ。ちなみに僕が勝ったらちょっとある事につきあってもらうよ」


アカン、今の一言で少し変なこと想像してしまったわ。

「なんかエロいなぁ、ウチなんか乱暴されてしまうん?」

「え!?あ!?いったい何を言ってるんだ!?誰そうは言ってないぞ!」


なんか空気が松沢君そっくりやな。

「それなら安心や、ウチかて勝ったところであんさんをどうしようとはおもっとらんからね」

「それは僕としても安心しちゃうね。さて、始めようか」

そう言いそいつは何歩か歩いて近寄って来よったわ。

ニット帽を被って髪の毛の先だけ金に染めた、少しかっこいい奴やったで。

そうやな、松沢君とのカップリングにしたら面白いんちゃう?

「そうそう、自己紹介が遅れたね。僕は東城静一って言うんだ、よろしく」


松沢×東城…結構いけるんやないか?

でもこいつウチの命かなんかを狙って来たって事やろ?

はあ…今日は厄日ってやつやろか…。

マイナス10000点ね。

続く


原文:大正


訂正:ドュラハン