北風の寒い季節も過ぎ去り、ぽかぽかとした陽気の漂うある日の朝。場面は安澄市に存在する大きな公園。
緑の樹林に囲まれ、四季折々の花々が人々を出迎えたりと、様々な美しい景観を楽しめるこの公園は、
普段は子連れの家族や、散歩をしている老人、観光客などなど大勢の人々でにぎわっているはずなのだが、
今はそんな人影も全く見られず、不気味なほどの静けさがその場に満ちていた。
これこそが鷹森組の組員も使用していた人払いの術式の効力。
人々の心理に働きかけ、対象となる場所へ近づけさせないようにするものである。
しかしそんな人気のない公園の遊歩道を歩く二つの人影があった。そう、獅子土董子と鷹森梓である。
はたから見れば、仲のいい女友達同士で散歩に来ているというごくごくありふれた光景に見えるのだろう。
まさか実はこの二人がそれぞれ魔物と退魔の剣士で、後に生死をかけた戦いを行おうとしているとは誰も思わないのだから。
この遊歩道を抜けると『中央広場』と呼ばれる広いエリアがあり、そこにある芝生の広場が決戦の舞台である。
そこに到着するまでは時間がかかるため、二人で普通の友達のように会話をしながら、梓の案内で公園の景色を楽しんでいた。
「それにしてもここはいいところだなぁ。この桜の木もすっごくきれいだし…」
董子は歩道の両隣りに植栽されている桜の木々を交互に見つめながら感嘆の言葉を漏らす。
退魔の正装である巫女服を着込んだ梓は、さも当然!という得意げな表情を浮かべる。
「えへへ。そうでしょ? 小さいころは、よくお姉ちゃんたちと一緒に遊びに来ていたんだよ」
「ふーん…、思い出の場所なんだなぁ」
私も橋本さんと一緒に来たかったな、と董子は心の中で思ったが、口には出さなかった。
今まで私は橋本さんにはこの両手では数え切れないほどたくさんのもの…、そして愛をもらった。
それだけで十分に私の心は満たされているんだ、と自分に言い聞かせる。
「……それにしても、桜かぁ」
ふふっ、と何かを思い出したような笑みを浮かべて、董子がぽつりとつぶやく。
「?? どうしたの? 董子ちゃん」
「いや、ただちょっと桜を見ていると、あの時のことを思い出してさ」
あの時?と首をかしげる梓だったが、すぐに思い出したようで、
「…ああ、なるほどね!あのときのことは忘れもしないよ。だってそれは…」
董子と梓は歩みを止める。
「そう。私たちの、大切な思い出――」
そして、自分たちの頭上を覆っている桜の木を見上げる。
花の盛りも近く、これ見よがしにと一斉に咲き誇る桜は、公園の景色を鮮やかな薄紅色に染め上げていたのだった。
舞い散る桜の花びらの中で、二人はあることを思い出していた。
それは彼女たちの出会った日。
今回は、そんな日に起こったちょっとした騒動のお話である。
市に虎を放つ如し
第二十話 桜の日の思い出・彼女たちの出会った日
時は遡り、一年ほど前の鷲峰学園高等学校。
入学式が終わってから数日が経過し、クラスの者同士が徐々になじんでくる頃だった。
時刻は午後六時十分。全日制の生徒にとってはもう下校時間だが、定時制に通う生徒たちにとっては登校、そして給食の時間である。
姉からおさがりのブレザーを貰ったばかりの梓はさっき学食で買ったほかほかのコロッケの袋を抱え、
下校中の全日制の生徒の合間を縫いつつ、とある場所を目指して夕日の差し掛かった校門前の広場を走っていた。
その場所とは、校庭の片隅に植えられている巨大な桜の木。梓はそこでコロッケを食べようと考えていたのだ。
「やっぱり大きな桜だねぇ〜。こんなにきれいな桜なのに、誰も見に来ないなんてもったいないなぁ…」
だったらあたしが独り占めするもんねっ!と鼻歌を歌いつつ上機嫌で桜の木の下に駆けていく梓。
だがよく見ると、桜の下に一つの人影があるのを確認した。どうやら先客がいるらしい。
その姿には見覚えがあった。同い年くらいなのだが、一見すると男性に見えてしまいそうなほど体格のいい女の子。
青い作業着の上着を腰に巻きつけ、髪をヘアバンドで後ろに留めている。
お話をしたことはなかったけど、確かこの子は同じクラスの子だったな、と梓は思っていた。
木々の間においてあるベンチに座り、焼きそばパンをほおばっている作業着の女の子は、
梓が近づいてきたことに気がつくと軽く声をかけてきた。
「ん?あんたもこの桜を見にきたのか?」
「まあね。学校に入ってからずぅっと気になってたんだけど、誰も見に来ていなかったからもったいないなぁと思って」
「ハハッ!そいつは奇遇だなぁ!私も同じことを思ってたんだよ」
作業着の女の子はそう笑うと、梓の目の前に焼きそばパンを差し出した。
「ほら。私の焼きそばパン、やるよ。…ま、同じ花見仲間ができたって記念でさ」
「ありがとう!…じゃあね、あたしのこのコロッケもアナタにあげるよ。ほかほかでおいしいんだよっ!」
梓もお返しにと自分のコロッケを女の子に手渡す。
梓は焼きそばパンを一口食べると、おぉっ!と、そのおいしさにうなりをあげた。
次の学食は、コロッケのほかに焼きそばパンも買うこともひそかに考え込んでいる梓であった。
一足先にコロッケを食べ終えていた作業着の女の子は、むしゃむしゃと焼きそばパンをおいしそうに食べている梓に話しかけた。
「…そうだ、自己紹介がまだだったね。私は獅子土董子。えっとあんたは…」
「あたしは鷹森あずさ!本当は漢字で『梓』なんだけど変換がメンドウだからひらがなでいいよ」
「お、おう…? なんかよくわからないけど… とりあえずよろしく、鷹森さん」
「うん!こちらこそよろしくね。獅子土さん!」
そう言いながら、梓は満面の笑顔で広げた右手を董子にスッと差し出す。
突然のことに一瞬戸惑った董子だったが、ほどなくして董子も笑顔で握手に応えた。
こうして、ガシッと固い握手を結び、完全に打ち解けた二人は、次はお互いについての話をしていた。
積もる話も盛り上がっていたころ、校舎から、学ランで短髪ストレートの学ランの男子生徒と、
茶髪で黒ぶちのメガネをかけたセーラー服の女子生徒の二人組がこちらへ向かって歩いてくるのが見える。
どうやらこの桜の木の下に新たな訪問者が現れたようだ。
「お、おい咲耶。やっぱり俺はこの時間を利用して柔道部の部室に寄って稽古を…」
「もう!今日はあの桜の木の下で二人で弁当食べるって約束したやろ?
だから今日はいつもの喫茶店で先にご飯を済ませたりしなかったやんか」
なにか事情があるのか、げんなりとした表情でしぶしぶと歩いている学ランの男子生徒。
咲耶と呼ばれたセーラー服の女子生徒はそんな彼に関西弁の強い口調で反論する。
「いやいやいや、けどなぁ、俺はそんなことよりも男を磨く修行g」
「せっかく松沢くんのためにいーっぱい作ってきたんやから、一緒に弁当食べるで。な?」
「ふぅ。お前も結構頑固なヤツだよなぁ。へいへい、わかったよ」
なんだかんだで強引に丸めこまれてしまった松沢と呼ばれた学ランの男子生徒。
しかしまだセーラー服の女子生徒・咲耶のほうは頬をふくらませ、まだ納得いかないような表情をしている。
「(むー、幼馴染の女の子と一緒に弁当なんて、こんな恋愛ゲーのようなシチュはリアルでは絶対味わえへんのに…
せめて嬉しそうな顔したりとか、ちょっとはウチのことを意識してくれても… って、何考えとるんやウチは…)」
何やらぶつぶつと小声でつぶやいていた咲耶だが、ふと目線を桜の下のベンチのほうにむけると、
すでにベンチには二人の先客がいることに気付いた。それだけならよかったのだが、その二人の女子生徒の片方を見て、咲耶の表情が険しくなる。
「(………あの作業着の女の子…、確かヤクザの橋本組とのつながりがあるっていう…)」
「あれ?アナタたちは同じクラスの…」
急に作業着の女子生徒の隣に座っていたブレザーの女子生徒に話しかけられ、『ほぇっ?』と目を丸くしてビクッ!とする咲耶。
やむなくさっき考えようとしていたことを一時中断する。
ベンチが満員という様子をみた松沢は、しめた!と小さくガッツポーズをしてわざとらしい口調で、
「お、なんだ。もうベンチに座ってる奴がいるじゃねぇか。これはもう座れないな〜!じゃ、俺は今から柔道部n」
「待ちや松沢くん!!(ガシィッ!) ……あー…、えっと、あの…、ウチらも、ベンチに座らせてもらってええやろか?」
「ハハハ… なんか賑やかだなぁあんたたちは…。まぁ、もちろんOKさ。
よいしょ、っと。こうやって詰めればまだ二人くらい座れるだろ。さ、二人とも早く座りな」
くるりと背を向け、逃げようとダッシュの構えをした松沢を、咲耶がものすごい力で捕まえ、
董子に薦められるまま二人とも仲良くベンチに座ることとなった。
「……そういえば、同じクラスなのに二人とも名前を聞いてなかったね。名前はなんていうの?」
梓は二人の顔を交互に見ながら尋ねる。
入学して間がないと、クラスメイトの顔と名前がなかなか一致しないのは無理もない話である。(え?もしかして筆者だけ?)
「ああ、ウチの名前は有沢咲耶。そんでこっちはウチの幼馴染の――」
「松沢健太郎だ!よろしくなァ!」
咲耶の言葉をさえぎり、健太郎はニヤっと笑みを浮かべてビシィッ!とガッツポーズをする。
「あ、ああ… よろしく…」と健太郎のテンションに若干引き気味になる董子(反面梓は平常運転)。
「こっちも自己紹介だ。私は獅子土董子。近くの工事現場でバイトをしてんのよ」
「ほぉ、あんさんが獅子土さんやね。なるほど、やはりか…」
「??」
「いやっ、 なんでもない!なんでもないで!こ、こっちの話や… あははは」
咲耶は意味深なことを言い残すと、首をぶんぶんと振って言葉を詰まらせる。
董子は頭にはてなマークを浮かべるが、これ以上は追及しないようにした。
続いて梓が自己紹介を始める。
「私は鷹森あずさだよ。仲良くしてねっ」
「(誰もつっこんでないけどウチはあんたが佩いている日本刀っぽいのが気になるんやけど… コスプレの一種やろか?)」
「ふーん、獅子土に鷹森か… ときに獅子土ォ、お前いいカラダしてるよなぁ」
「Σ お、おいっ 松沢!あんた何じろじろと私を見てんのよさぁ!」
「女の子なのにこんなにたくましい体だもん。本当にすごいよねぇ」
「殴るよあんたら!!」
そんなこんなでこの後もわいわいぎゃーぎゃーと騒ぐ四人だったが、それは割愛して話は少し進む。
「この桜を見るたびいつも思ってたんだけど、本当に見事に咲いてるな…」
頭上の桜を見上げ、董子がぽつりと漏らす。
今がちょうど見ごろの満開の桜の花びらは夕日に照らされ、風に吹かれて少しずつ散り始めている。
「この桜…、誰も知らんと思うんやけど、実はひとつこれにまつわるエピソードがあるんよな」
「へぇ、なになに?」
ふふん、と鼻を鳴らし得意げになっている咲耶の言葉に、興味津々そうに梓が食いつく。
「この桜の木の枝を見てほしいんやけど…、隣に植えてある桜の木の枝が、
お互いを支えているいるような感じで、かさなっとるように見えるやろ?」
ほら、と咲耶が指をさすと、ほかの三人もその枝のほうを見つめる。
大きく成長し、長く伸びているこの桜の木の枝が、隣の桜の木の枝と複雑に絡み合っていた。
「この様子は、まるで人と人が手を取り合っているようだって初代校長がたとえたらしくて、
それがもとになってこの桜の木には人と人を結びつける…って言うジンクスがあるんやって」
「なんか無理やりじゃね?こんだけ木と木の間が近けりゃ、桜の枝が重なるのも普通だろ」
咲耶の話を聞いた健太郎は、いかにもどうでもよさげに咲耶の話に水を差した。
それを聞いた咲耶は黙ってはおらず、すぐに抗議の声を上げる。
「うぅ〜…、そんなんウチに言われても… これはそう伝えられてる話なんやからぁ」
「松沢、こういうのは普通突っ込むもんじゃないだろう…。有沢さん、私はこういう話好きだよ」
「…アナタはオンナゴコロをもっと理解したほうがいいと思うよ。マイナス15点」
「Σ うぇぇっ!? 俺そんなにバッシングされないとだめなのか!?」
董子や梓にも冷たい視線を浴びせられ、のぉぉん!!と叫び声をあげて頭を抱える健太郎。
面と向かって女の子に指摘されるとやっぱりショックな健太郎なのだった。
と。
「(………? なんだ…?この音…)」
董子の耳にはかすかに何かの音が聞こえていた。
ちらりと横目をやると、ほかの三人は普通に会話をしている。彼らはまだ気づいてはいないようだ。
その間にも音はどんどんと近づいてくる。その音は一つではなく、幾重にも重なった音が一つの音をなしているように聞こえる。
董子は目を閉じ、耳をすませて集中した。
「(この音は…… 車? いや、違う。これは…バイクの音だ! しかも何十台も!!)」
董子が音の正体に気付いてベンチから立ち上がると、三人も董子のただならぬ様子を見て少し遅れて立ち上がった。
何かに気付いた梓が表情を一変させ、大声で叫ぶ。
「…!! 見てっ!校門のほう!!様子がおかしいよ!?」
校門は騒然としていた。下校しようとしていた生徒たちが、必死に校門から校舎へと逃げ戻っているのが見える。
そして次の瞬間、逃げようとしていた生徒の列に、一台の巨大なバイクが突っ込んだ。
それに続いて、何十台ものバイクがヴォンヴォンヴォォン!!と低い唸りをあげて門の中へ入ってくる。
彼らは黒、赤、黄…など色とりどりの特攻服を身にまとい、そのほとんどのバイクが二人乗りや三人乗りで、
『ヒャッハー!』やら『イヤッフー!』やら妙な奇声を上げながら、手に持っている鉄パイプや金属バットを振り回している。
これはもう普通にはあり得ない光景だ。ただただ生徒たちは悲鳴を上げ、得体のしれない恐怖に右往左往に逃げまどうばかりだった。
そんな光景を目の当たりにした董子の怒りが頂点へと達する。
「あいつら… 絶対に許さない…ッ!!」
「あ、待って獅子土さん!あたしも行くよ!」
「俺も加勢するぜ!」
「ちょっ、ちょっとみんな待ってや!」
拳を握り締め、一人飛び出した董子を、全員が追いかける。
頭で考えるよりも先に、すでに身体が先に動いている。今はそんな状態だった。
「てめぇら何やってんだァッ!!」
まもなく校門前の広場に躍り出ると、怒りに任せ校舎全体に響き渡るかのような咆哮をあげる董子。
このバイクの男たちのボスと思しき男が乗った巨大なバイクが、黒い排気ガスを吹かしつつ董子たちの前方で砂埃を上げて停車する。
それにあわせて、仲間たちのバイクも次々と乱雑に停車したようだ。
見た目は白い特攻服に、その至る所には一目では意味がわからない難読漢字が縫い付けられている。
さらにワックスでガチガチに固めた金髪のリーゼントヘア、極めつけにサングラス…というある種典型的な出で立ちであるボスと思しき男は、
忌々しげに痰をはき捨てると、バイクから乱暴に降りて董子に向けて言い放った。
「あン?誰に口きいてやがんだクソアマァ」
「こっちはなにやってんだって聞いてんのよ!!私たちの学校で好き勝手暴れやがって…!!」
「…あの、し、獅子土さん」
バイクの男に対して敵対心をむき出しにする董子の肩を、咲耶が控えめにぽんぽんとたたく。
そして男には聞こえないように、小声で董子に説明をした。
「あいつの名前は、入川達朗(いるがわたつろう)。昔この辺でよく悪さしとった珍走団…もとい、暴走族の総長や」
「暴走族の…?なんでそんなやつがここに…?」
「あいつらの楽しみは、近隣の学校をこうやって荒らしまわって、生徒たちのお金をぎょうさん巻き上げることや。
前に警察の一斉摘発を受けて、もう解散したと思っとったけど… まさかまた力をつけてきよったとは…」
「ようするに、最低のクズ野郎だってことだな」
健太郎が会話に割り込み、入川に視線を流しながらわざとらしく『クズ野郎』という言葉を強調して、彼に聞こえるように発言する。
ビキィ!と、健太郎の挑発を受けた入川の眉がつりあがった。
それを見て『はわわーーっ!!』と叫び声をあげて青ざめた咲耶が、あわてて健太郎を止めにかかる。
「ままままま松沢くん!こいつらをあんまり刺激せんほうがええで…!
も、もしかしたらひどい目に合わされるかm」
「有沢さんには悪いけど、あたしも言うことは聞けないよ。
だってこんなクズ野郎を見過ごすのは絶対にイヤだもん。…でしょ?獅子土さん?」
「あぁ、当たり前さぁ」
健太郎に続き、梓や董子もノリノリになっているのを見て、『あーもう!!』と咲耶は頭を抱えた。
咲耶は、自らが仕えている四ツ和財団の膨大なネットワークから得られる情報で、この男たちについては前々から知っていたのだ。
人数は全盛期よりもはるかに少ないとはいえ、極悪な暴走族として今も知られている彼らに歯向かうことは自殺行為に等しい。
少し考えて、咲耶は大きく息を吐いた。
「しゃあないなぁ…。ウチも腹を決めたわ。ま、こいういう昔の熱血漫画みたいな展開は好きやし」
そうこなくっちゃ!と四人で盛り上がる一方で、入川の不快度指数はどんどんあがっていく。
今まで生徒はおろか、生徒を守らなければならないはずの教員の中にももここまで反抗してくる目障りな奴らはいなかった。なのになぜだ?
こいつらはほか奴らとは違って、全く怯むそぶりを見せない。入川はそれが気に食わなかったのだ。
「(リアルにクソ気にくわねェ… こいつら絶対ェ半殺しにしてやる…))」
入川は手に持っていたタバコの箱をグシャッと握りつぶし、大声で叫んだ。
「テメェらがやる気ならこっちもかるーく遊んでやるよ。おい野郎どもォ!!」
入川が命じると、仲間たちがぞろぞろと移動を始める。まるでキャンプファイヤーをするときのように、董子ら四人を円形に囲う。
誰もかれもがガラの悪い男で、よく見ると、中には金属バットや鉄パイプ、果てはナイフなどの凶器を持っている者もいた。
この凶器で非力な生徒たちを脅し、金品などを搾取してきたのだろう。男たちはへらへらと笑っていた。
「気い付けや… あいつらはたくさんの凶器を所持しとるんやで」
「…だね。見た感じ、どれもかなり使いこまれてるよ」
「ほかの族とのケンカもずいぶんな数をこなしてきたのが伝わってくるぜ…」
少しずつ迫ってくる男たちを警戒してじりじりと後ずさりをしながら、
上から咲耶、梓、健太郎の順に、それぞれ見た目からの暴走族の男たちの実力を分析する。
「おまけに数で攻めてくるタイプか…。 くっ、卑怯だぞ! 入川ァッ!!」
「ん〜?聞こえねぇなぁ。言ってる意味がわからねーわ」
最後に董子が入川に向かって声を張り上げて叫ぶのだが、
もうすでに入川は仲間の作った円形の外側におり、董子を馬鹿にしたような口調で言葉を返した。
董子はぎりぎりと奥歯をかみ締める。
「くくく… しっかし楽しいよなァ… てめーらクズの逃げ惑うさまを見るのはよぉ。やめらんねーわこりゃぁ」
入川はニタァ、とゆがんだ笑みを浮かべ、
「俺様に歯向かった見せしめだァ!!かまうこたぁねぇ。思う存分ボコっちまえやオラァ!!」
入川の合図とともに仲間の男たちは奇声をあげつつ四人の男女に襲いかかった。
外道な悪役が、自分たちに反抗したたった数人の人間に集団で暴行を加える…これはまさに最悪の構図だといっても過言ではない。
そんなフィクションの世界でしか見られないような凄惨な状況を見て、言葉を失ってしまう鷲峰学園の学生たち。
さらに絶望的なのは、相手は総長入川率いる三、四十名近くの人間。
それに対して、こちらはたったの四人。勝負の結果は火を見るより明らかだ。
しかし。
「あァ?」
入川は口をぽかんと開けて目を見開いたまま硬直していた。
自分の描いたシナリオの中ではすでにこの四人の雑魚は地面に倒れていて、
後は心置きなくこの鷲峰学園で好きなだけ暴れまくっているはずだった。
でも違った。
何故なら、
「どぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁあああっ!!!」
董子は、工事現場で鍛えられた筋力で暴走族が乗っていたバイクを振り回し、迫ってくる男たちをなぎ払っている。
「はぁぁっ!!てぇいっ!!」
梓は、自らが洗練した剣術を格闘技に応用し、すばやい身のこなしで一人一人確実に倒している。
「おらぁ!お前らのノロマな拳になんかあたるかよっ、とぉ!!」
健太郎は、男たちの攻撃を完全に見切り、綺麗に交わしたり防御をしつつカウンターで拳を叩きこむ。
「ウチのことをただのゲーム好きのオタクやと舐めっとったらあかんでぇ!
(こう見えて今までたくさんの修羅場を潜りぬけて来とるんや…! コミケ会場とか)」
咲耶は、普段の様子からは想像できないようなキレのある動きで男たちを翻弄する。
最初は明らかに優勢だった入川たち暴走族だったが、気づけばこちら側がかなり圧倒されていた。
入川からは余裕の表情が消え、徐々にあせりの色が現れてくる。
「おいおいおいおい!!何お前らやられてんだよ!?相手はたったの四人だぞ!?」
「兄貴… こいつら… メチャクチャつえぇッす…」
入川が恐る恐る下を見ると、ギョッと身を固まらせた。
顔がボコボコの痣だらけになり、マンガのギャグシーンによくみられるようなひどい姿になった仲間が這いつくばっていた。
「ちィっ!! クソッタレ… この役立たずどもがァッ!!」
入川は逆上して、サッカーボールを蹴りあげるように仲間の顔を思い切り蹴り飛ばした。
理不尽に蹴られた仲間は、『ブゴォ!?』と短くうめき声を発して気を失う。
「さーて、後はあんただけになったね…」
ギロリ、と四人の視線が、すでに一人となってしまった入川に注がれる。
今までにない生命の危機を感じたこの男は、今、体中の穴という穴から嫌な汗が流れ出していた。
呼吸数と心臓の拍動数が急速に上昇する。
「(ま、まさかこの俺様が… こいつらごときにブルっちまってるとでもいうのか…!?)」
自分では認めたくないが、確実にこの四人の人間におびえていた。
次は自分の番だと思うと、とたんに体中が震え、足がガクガクと笑いだす。
「く、クソォ… クソォッ!クソォックソォクソォクソがァァァァッ!!!
この俺様をコケにしやがってェェッ!!! 」
入川の目はギンギンに血走り、自分の喉がガラガラになって声が裏返るほどの叫び声をあげる。
ゼエ、ゼエ、と息を荒げつつ上半身を振ってあたりを見渡す入川は、先ほど蹴りあげた仲間が果物ナイフを持っていたのを確認すると、
すぐさまそれを拾い上げ、ガクガクと震える腕でそれを構える。
「ヘ、ヘヘ… ウッシャアァアアア!!ま、まずはそこの学ラン!!テメェからだァ!!
テメェから血祭りにあげてやらァァアァアアアアアッ!!!」
そしてたまたま目に入った健太郎に向かって猛ダッシュで突っ込み、ナイフを振りかぶって健太郎を突き刺そうとする。
「ハァ… 全然遅ぇぜ」
健太郎は溜息を吐き、入川が渾身の力でナイフを振り降ろしたナイフを必要最小限の動きでひらりと交わす。
勢い余って、前のめりになりつつよろよろと二、三歩歩いた入川を、
「おっと、足が滑ってしもうたわー(棒読み)」
「ぬぉぁっ!?」
後ろにいた咲耶が、スッと足を引っかけてかけて入川を転ばせる。
無様に顔から思いっきりこけてしまったため、顔には大量の擦り傷ができ、かけていたサングラスも割れてしまう。
その拍子にナイフも何処かへ飛んで行ってしまい、ナイフを握っていた右手で顔を押さえつつ、左手をついて立ち上がろうとした入川の目の前には…
「……ッ!!!??」
怒りの表情をたたえた獅子土董子が仁王立ちをしていた。
ここで入川の心は完全に砕かれる。
「あ゙あ゙あ゙あぁぁぁ゙ああぁ゙あ!!!うわ゙あああ゙ぁ゙ぁ゙゙ぁぁ゙ぁぉあ゙あ゙ぁあ゙」
ほぼ錯乱状態になり、情けなく涙と鼻水をたらしながら仲間を捨てて這う這うの体で退散しようとする入川。
「ど・こ・に・い・く・の・か・な〜?」
「ヒィッ!?」
瞬間移動したかのようにいつの間にか校門の手前に先回りしていた梓が、入川の目の前でニッコリと笑っていた。
これでは学園の外に逃げ出すことができない。
再び後ろを振り向くと、今度は董子たちを筆頭に、先ほどまでおびえきっていた大勢の学園の生徒たちまでもが入川をにらみつけていた。
「(く、くそっ… もうこれで完全に袋のねずみじゃねぇか…ッ!!)」
立場が大逆転し、もはや完全に四面楚歌、孤立無援の状態になった入川。
この男の脳内には、とあるゲームのキャッチフレーズである、『どうあがいても、絶望』という単語がぐるぐる回っていた。
「おい、入川」
董子が入川にゆっくりと近づきつつ、低い声で口を開く。
「あんたは今までどんな気持ちだった?」
「な、何だよ… よ、よるなッ!来るなッ!!お、お、俺様のそばに近づくなァッ!!」
じりじりと距離を詰めてゆく。
「弱いものたちを蹂躙し続けてきた気持ちは…」
「う、あ、あ…」
入川との距離が近まると、やがて董子は拳に力を込め始める。
「あんたにはわからないでしょうね。彼らがどんなに苦しんできたか、どんなに恐怖してきたか…!!」
拳にこめられた力が今、最大にまで到達する。
「これは、今まであんたたちクズ野郎が
罪もない生徒たちに与えてきたみんなの痛みだ!!!!」
声を上げる暇も許されなかった。刹那、ズゴギィィィッ!!!!と、超速の右ストレートが入川の顔面にクリティカルヒットした。
鼻と口から大量の血を流し、殴られた時のスピードのままにズシャァァ!と地面に崩れ落ちる。
白目をむいた身体がぴくぴくと痙攣し、入川は完全に気絶してしまった。文句なしの一発KOである。
それが確認されると、あたりは学園の生徒たちによる波のような大歓声に包まれた。
極悪な暴走族たちの脅威から、彼らはたったの四人だけでこの学園を守り抜いたのだ。
「それにしても、意外と大したことなかったなぁ。こんなのが周りの学校で暴れてたのかよ」
手をパンパン、とはらいながら健太郎はだるそうに言う。
それに続いて咲耶が頭をぽりぽりとかきながら発言した。
「いやー、その場の雰囲気でなんかはっちゃけてしもうたけど、途中ウチはもうアカンと思ってしもうたわー…。
格ゲーとかアクションゲームとかやりこんどってよかったわ。その経験が役に立ったのかも?」
「あ、ある意味すげぇけどそれはさすがにありえねぇぞ…」
健太郎のツッコミを軽く聞き流すと、咲耶は周りでのびている暴走族のメンバーや、バイクの残骸、
董子が一発必殺で倒した入川の姿を順繰りに見つめて考えこむ。
「(………まあ、学校へ入る前にウチら監視員にこの暴走族のことを入念に教えこんどったのは、
こいつらが学校を襲撃して風評を貶める前に、動き次第即座に駆除しろということやったんやろうけど、
その必要ももうなくなってしもうたな…。一応事の次第は『上司』に報告しとかなあかんな)」
こそこそと機種変前の携帯電話を取り出した咲耶は、財団の専用メールに連絡をしようとしたところ、
ふと横目で董子の姿を見つめて、悲しそうな表情を浮かべる。
「(それにしても、獅子土さんはホンマ優しくてええ人なんやな…。こんな任務さえなかったらウチは…)」
一方、健太郎は健太郎で董子について思うところはあったようで、
「(獅子土董子… 一目見たときから見込みのある女だとは思っていたが、やはり俺の目に狂いはなかったぜ…!!
自分の身を省みず、あの入川とかいう男に突っ込んでいったあの勇気。まさしく本物だ)」
梓と会話をしている董子を見て、健太郎はうんうんと頷いて小さく笑みを浮かべる。
「(俺はそんなお前の姿に惚れたぜ! この気持ちが恋心とかいうやつなのか…!?)」
……よし、決めたぁ! 獅子土…いや、董子! 今からお前は俺のライバルだ!!
愛とは拳で語り合うもの…。それが真の漢の愛の表現方法だ!!)
健太郎は心の中でそう叫ぶと、天に向かってビシィィ!!と拳を突き上げる。
この心の決意から、彼は打倒・董子への修行道を歩んでいくことになるのであった。
「獅子土さん、すごくかっこよかったねぇ!あたしが男の子だったら確実に惚れてたよ〜!」
「ちょ、冗談はよしてくれよ。ただ私はあの男が気に入らなかっただけだし…」
董子の手を握ってブンブンと上下に振りながら、梓は上機嫌で董子にいう。
董子はというと、まだ暴走族をすべて退けたという実感がないらしく、照れ気味になって梓に返答をする。
「でも、あの暴走族を倒すことができたのも… あの桜が私たちを引き合わせてくれたおかげかな」
そう言いながら、董子はさっきの桜の木のほうに視線を向ける。
すると、さっきまで満開だったその桜は一気に散り始め、大量の花びらが董子ら四人や周りの生徒たちの頭上を覆っていた。
……あたかも、この桜が四人を引き合わせるという役目を終えたかのように。
枝は小さな緑色の葉っぱをつけ、ピンク色の花びらはひとつ、またひとつと風に吹かれて夕日の空へ飛ばされてゆく。
「今なら、さっきの咲耶の話… 俺も信じられるかもしれねーな」
頭上に舞う桜の花びらを見上げた健太郎は、先ほどの否定的な態度を一転させてそう言った。
「…もしかしたらウチらがここで出会うんは最初から予知されとったことなのかも…?
何でやろか。なんか判らへんけれど、なんとなくそんな気がするんよ」
『って、我ながら厨二っぽいセリフ…』と頬を赤らめる咲耶。
「そうだとしたら本当にすごいよね。そういうのを『シュクメイ』っていうのかな?言われてみると、あたしもそんな気がしてきたなぁ…」
両手を頭の後ろで組みながら、梓もいぶかしげな顔をして発言する。
「――ま、そういう難しいことはあとにしてさ」
しばらく桜の木を見つめていた董子は、くるりと桜の木のほうから背を向け、梓、健太郎、咲耶の三人と向き合った。
「私は、あんたたちとここで出会えたことは一生忘れないよ」
三人はほぼ同時にそれぞれの返事をし、強く頷いた。
そして董子は全員の顔をゆっくりと見回すと、
「よーし。じゃあみんな、手を出してくれないか?」
董子が最初に右手を前にスッと差し出すと、すぐにほかの三人がその手の上に手を重ねていく。
全員が手を重ね終えると、舞っていた桜の花びらが四人の周りを包み込み、天へと昇っていった。
その様子を見て、董子は目一杯の声で叫んだ。
「この桜の木に誓って、今この瞬間から… 私たちは一生の友達だ!!」
「ちっちっち… それは違うよ」
すると梓が、あいているほうの手の指を立ててメトロノームのように指を動かして言った。
『?』と、董子を含め三人は頭にはてなマークを浮かべる。
そして梓は、とても得意げな表情で、董子の言葉をこう訂正した。
「あたしたちは一生の"親友"だよ!!……董子ちゃん!」
そんな梓の言葉に一瞬きょとんとしてしまった董子だったが、ニッと笑みを作ると、
梓に負けない得意げな表情で返事をした。
「うんっ。そうだな! ……あずさ!」
…。
「――あの出来事があったからこそ、私達は今でもかわらず親友同士ってわけだ」
「うん。あの桜の木には本当にカンシャしないとね」
時系列は元に戻る。
遊歩道の桜並木のエリアを過ぎ去り、一本の道という狭い空間から広々とした空間へと視界が大きく展ける。
あたり一面が緑一色の草原。遮るものがなくなり、初春の優しい日差しと、暖かい風が二人の頬を撫でる。
ちょっとした昔話に花を咲かせていた間に、二人は『中央広場』にたどり着いていたようだ。
遠くには、桜の木やほかの木々が草原の周りを囲うように配置されている。
「さ、着いたよ。ここが『中央広場』っていってね、まぁ一言でいえば… んー…、とにかく広い場所ってこと」
「なんかまんまだなぁ…。まあなるほど、ここなら私達がいくら暴れても大丈夫そうね」
「あ、待って。董子ちゃん」
肩をコキコキと鳴らし、軽く準備運動をしながら所定の位置へと移動しようとする董子。
だが、そんな董子を梓が呼びとめる。
「戦いの前に…。握手しよう、董子ちゃん」
梓が、笑顔でスッと広げた右手を前に差し出す。
突然の梓の行為に董子は少し困惑気味のようで、きょとんとした表情でもう一度梓に聞き返した。
「握手?」
「そう。握手」
梓は頷いた。
「命をかけた戦いとか、そういう大事な決闘の時には相手同士お互い敬意を払うために、
まずは握手をすることが昔からの礼儀だ、…っておじいちゃんが言ってたの」
「ああー、それなら私も聞いたことがあるな。…なんか、あこがれるよなぁ。それって」
「うん。だからね、あたしたちもしようよ。握手」
「それはもちろん!」
董子は喜んで梓の握手に応え、董子と梓はガッシリと強く握手を結ぶ。
それと同時に、二人の頭の中では初めて出会った日に交わした握手の映像が浮かんでいた。
今までみんなで過ごした時間が、走馬灯のように駆け巡ってゆく。
…あのときから、本当に様々なことがあった。
何の変哲もなく過ごしてきた日常。しかし、南陽子の出現を皮切りに、理不尽な非日常の世界へと放り込まれ、
時には、先日の鷹森組と橋本組の間で勃発した抗争のときように、二人の友情が壊れかけたこともあった。
けれども、今も二人はこうして親友同士として握手を結んでいる。
二人の中で芽生え育まれてきた絆は、何よりも硬く、どんな困難にも打ち勝てるほど強く結ばれているのだ。
「じゃあ、お話はここで終わりね…。そろそろ始めよう。あずさ」
「うん」
名残惜しそうな表情をした二人は、少しずつ手の力を緩め、やがて二つの手はゆっくりと離れる。
そしてここからは、本当の戦いが始まるのだ。
二人はたがいに背を向け、ガンマンが早撃ちの決闘を行うときのように、逆の方向へ進んでいく。
二人が所定の位置に立つと、強い風が草原を駆け抜けた。遠くの桜の花びらが二人のもとまで運ばれてくる。
梓は目を閉じ、家を出る前に父や姉と交わした言葉を心の中で反すうした。
『……そうか。お前たちが戦うと決めたのならば、私達が止める理由はない。
ただ、やるからにはお互い真剣に、悔いの残らぬよう、全力を出して戦うことだ――』
という父の言葉。
『トモダチと戦うなんて辛いことだとは思うけど…、姉としてあなたのブジを祈っているわ――』
という姉の言葉。
「(……お父さん。お姉ちゃん。あたしは…)」
梓は刀をゆっくりと丁寧に抜き終えると、大きく深呼吸をして精神を統一する。
「全力で戦うよ! 目の前の魔物を倒すのがあたしの使命だから!!」
(…たとえそれが、あたしの一番大切な親友だとしても…!!)
迷いは断ち切った。刀を構え、両目をカッ!!と見開いて、梓は大親友・董子の姿を見据える。
そんな大親友・梓の決意を聞いた董子は、いい決意だ、と口の端に小さく笑みを浮かべる。
「そうこなくっちゃなぁ! 勝つのはあんたか、それとも私か… さぁ、今度こそ決着をつけるよ!!」
直後、轟ッ!!!という爆音とともに、二人は砲弾のような速度で前に打ち出される。
地面を蹴り上げたときのすさまじい風圧で、周りを舞っていた桜の花びらが散り散りに飛ばされていった。
その突風により少しの間閉じていた目を開けると、さっきまでの二人の人間の姿はすでになく、
今まさに牙を剥かんとする一匹の魔物の姿と、刀を構えて強大な力に立ち向かう一人の退魔師の姿がそこにあった。
相対する関係にありつつも、その垣根を越えて唯一無二の親友同士となった獅子土董子と鷹森梓。
桜舞うこの美しい景観の中で、『親友としての決着』をつけるべく、この二人はぶつかってゆく。
それぞれの信念を、その胸に掲げて…。
次回へ続く…。
作:黒星 左翼
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